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Q&A

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プロウペスを投与する患者の管理

Q1

子宮切開法により、子宮破裂のリスクに違いはあるか?

 A.

子宮切開法によって、また、子宮破裂の既往のある妊婦ではその部位によって子宮破裂発症率が異なることが示されています1)。なお、帝王切開の既往歴や子宮筋層の切開を伴う手術歴がある妊婦ではプロウペスは禁忌であり、子宮筋層に達しないポリープ等の除去歴のある妊婦ではプロウペスの投与は可能です。子宮頸管を含む子宮切開の既往歴がある場合には、その旨を医師に伝えるよう、患者に確認してください。

子宮切開法と子宮破裂のリスク1)

子宮切開法 子宮破裂発症率
・古典的切開 2〜9%
・T字切開 4〜9%
・子宮下部縦切開 1〜7%
・1回の子宮下部横切開 0.2〜0.9%
子宮切開法 子宮破裂発症率
・複数回の子宮下部横切開 0.9〜1.8%
・子宮破裂の既往
  子宮下部 2〜6%
  子宮底部 9〜32%

Q2

プロウペスは無痛分娩時に投与可能か?

 A.

プロウペスによる無痛分娩時の有用性を検討した報告は確認できていません。一般的な無痛分娩及びプロウペスの対応方法や注意点に則り実施してください。 なお、プロスタグランジンE2の発熱作用が動物データ2)で確認されており、無痛分娩時にみられやすい発熱がより生じやすくなるおそれがあるため留意ください。

Q3

妊娠合併症として高血圧を認める妊婦に投与可能か?

 A.

プロウペスの副作用として血圧上昇、低血圧があります(添付文書 その他の副作用より)。
(プロウペスの使用の有無にかかわらず)妊娠高血圧症候群の患者において、分娩所要時間が24時間以上の経腟分娩や分娩誘発後の帝王切開では母体予後が悪化したとの報告もあると産婦人科診療ガイドライン 産科編20203)に記載されています。このため、プロウペス使用にあたっては患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合は適切な処置を行ってください。
なお、妊娠期間中に高血圧が認められる患者では、プロウペスの使用の有無にかかわらず一般的に出産後にDICを発症する危険が高まるおそれがあります。また、プロウペス投与の際に高血圧を合併していた妊婦は、合併していない妊婦に比べ、経腟分娩に至るまでの時間が長く、帝王切開に移行する割合が高いという報告があります4)

プロウペス投与時の分娩に及ぼす高血圧の影響(海外データ)[学会報告]5)

高血圧合併症
(n=268)
対照群
(n=848)
妊娠期間(日)(平均値±SD) 271±9 279±8
帝王切開 31.0(83例) 25.5(216例)
経腟分娩までの時間(分)[中央値(Q1、Q3)] 1693(1112.0,2333.5) 1335(861.5,1847.5)
12時間以内の娩出(経膣分娩) 4.3(11例) 11.4(97例)
24時間以内の娩出(経膣分娩) 26.9(72例) 40.7(345例)
36時間以内の娩出(経膣分娩) 46.6(125例) 61.2(519例)
NICUへの入院 9.3(25例) 9.3(79例)
出生から5分後のApgarスコア[中央値(min、max)] 9(6,10) 9(4,10)

特記の無いものは、割合(例数)
※妊娠高血圧腎症及びその他の高血圧
*p<0.0001、Wilcoxonの順位和検定

安全性: 帝王切開の発現率は高血圧合併群31.0%、対照群25.5%であった。

【海外事後解析5)

対象 プロウペス投与により分娩誘発された妊婦(改訂ビショップスコア4点以下)1,116例(高血圧※合併群268例、高血圧が認められない対照群848例)
方法 プロウペスの2つの多施設共同無作為化二重盲検比較試験を事後解析した。
解析計画 Wilcoxonの順位和検定を用いて解析した。

※妊娠高血圧腎症及びその他の高血圧

Q4

プロウペス投与中の妊婦の管理は?

 A.

プロウペス投与中は、分娩監視装置を用いて連続モニタリングを行ってください。トイレ歩行時等、医師が必要と認めた場合に、一時的に分娩監視装置を外すことは可能ですが、長時間のモニタリングの中断は行わないでください。 また、妊婦のバイタルサイン(血圧、脈拍)を定期的(おおむね2~3時間毎)に測定してください。また、分娩監視装置を用いた連続モニタリングで分娩の進行が推測されたときや患者からの訴えがあったときには、内診を検討してください。

※ 産婦人科診療ガイドライン 産科編 20206)の子宮収縮薬投与中のバイタルサイン測定時期の記載を参考にし、プロウペスが子宮頸管熟化剤であることから、投与される患者の状態の違いを考慮しプロウペス適正使用推進委員会にて検討した。

Q5

プロウペス除去後に他の子宮収縮薬等を使用する場合の対応は?

 A.

プロウペス除去後に子宮収縮薬を使用する場合、器械的子宮頸管熟化処置を行う場合及び、プロウペス投与前に器械的子宮頸管熟化処置を行う場合については、以下を確認してください。
なお、子宮収縮薬や器械的子宮頸管熟化処置、プラステロンとは併用禁忌です。併用することにより、子宮収縮作用が発現又は増強し、過強陣痛が認められ緊急帝王切開に至るおそれがあるため、併用できません。

プロウペス除去後に子宮収縮薬を使用する場合

プロウペス除去後に子宮収縮薬〔オキシトシン、ジノプロスト(PGF)、ジノプロストン(PGE2( 経口剤))〕を使用する場合は、1時間以上の間隔をあけ、十分な分娩監視を行い、妊婦及び胎児の状態を十分に観察した上で慎重に投与してください。

プロウペス除去後に子宮収縮薬を使用する場合

プロウペス除去後に子宮収縮薬を使用する場合

*十分な分娩監視を1時間以上行い、妊婦及び胎児の状態に異常が認められた場合には子宮収縮薬の投与の是非を検討すること。
**分娩監視装置を用いた分娩監視/定期的なバイタルサインのモニター。
***当該薬の添付文書や産婦人科診療ガイドライン 産科編 2020における使用方法等に準じて使用すること。

プロウペス除去後に器械的子宮頸管熟化処置を行う場合

プロウペス除去後に器械的子宮頸管熟化処置を行う場合は、1時間以上の間隔をあけ、十分な分娩監視を行い、妊婦及び胎児の状態を十分に観察した上で慎重に使用してください。

プロウペス除去後に器械的子宮頸管熟化処置を行う場合

*十分な分娩監視を1時間以上行い、妊婦及び胎児の状態に異常が認められた場合には器械的子宮頸管熟化処置の是非を検討すること。
**分娩監視装置を用いた分娩監視/定期的なバイタルサインのモニター。
***当該処置の添付文書や産婦人科診療ガイドライン 産科編 2020における使用方法等に準じて使用すること。

器械的子宮頸管熟化処置後にプロウペスを使用する場合

器械的子宮頸管熟化処置後にプロウペスを使用する場合は、感染徴候、臍帯下垂、脱出の有無や分娩監視装置を用いて妊婦及び胎児の状態に異常がないことを確認した上で開始してください。産婦人科診療ガイドライン 産科編2020においては、器械的子宮頸管熟化処置後から次の治療や処置までの時間について制限はありません。そのため、器械的子宮頸管熟化処置後にプロウペスを投与する際には、分娩監視装置を用いて妊婦及び胎児の状態に異常がないことを確認した上で投与してください。

器械的子宮頸管熟化処置後にプロウペスを使用する場合

器械的子宮頸管熟化処置後にプロウペスを使用する場合

*分娩監視装置を用いた分娩監視/定期的なバイタルサインのモニター。

プラステロンを使用する場合

プロウペス除去後に子宮頸管熟化薬であるプラステロンを使用する場合は、1時間以上の間隔をあけ、十分な分娩監視を行い、妊婦及び胎児の状態を十分に観察した上で慎重に投与してください。また、プラステロン使用後にプロウペスを投与する場合は、使用後十分な時間が経過した後(8時間が目安7))、分娩監視装置を用いて妊婦及び胎児の状態に異常がないことを確認した上で投与してください。

1)真木晋太郎:ペリネイタルケア. 2018; 136-139.
2)牛首文隆:最新医. 2000: 55(2); 273-279.
3)日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン 産科編 2020. 2020; 172-176.
4)Sheibani L. et al.:Hypertens Pregnancy. 2018: 37(1); 51-57.[フェリング依頼臨床試験]
5)Sheibani L. et al.:Reproductive Sciences. 2016: 23(1 Suppl.); 278A-279A.[フェリング依頼臨床試験]
6)日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン 産科編 2020. 2020; 250-251.
7)日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン 産科編 2020. 2020; 245-249.