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適正使用情報

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子宮頸管熟化におけるジノプロストン(PGE2)の作用

(1)子宮頸管熟化機構

子宮頸部は主にコラーゲン線維とグリコサミノグリカン(GAG)から構成され、分娩時には、そのコラーゲン線維の分解と保水性に富むヒアルロン酸等(GAGの一種)の増加により、組織が軟化・熟化します。

炎症や子宮頸管の伸展刺激等により誘導されたIL-1β、IL-8を中心とした炎症性サイトカインは、正のフィードバックを形成しながら、最終的にプロスタグランジン(prostaglandin:PG)の生成を導き、PGE2受容体を介して子宮頸管の熟化が進行します1-5)

子宮頸管熟化機構の概略1、4、5)
子宮頸管熟化機構の概略

DHA-S:デヒドロエピアンドロステロンサルフェート
MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ(蛋白分解酵素)
HAS:ヒアルロン酸合成酵素
GAG:グリコサミノグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)

引用文献1、4、5)より作図

プロウペスは、妊娠37週以降に子宮頸管の熟化が進まない場合に、コラゲナーゼ活性を高めることでコラーゲン線維の分解を促進しヒアルロン酸を増加させ、子宮頸管の熟化を促進させます5-7)

プロウペスの作用
プロウペスの作用

(2)PGE2による子宮頸管熟化作用と子宮収縮作用

PGE2受容体にはEP1、EP2、EP3、EP4の4種類のサブタイプが存在し、EP1、EP3は主として子宮収縮に、EP2は子宮弛緩に、EP4は子宮頸管熟化に働きます。これらの受容体は妊娠経過中の発現に差がみられ、陣痛発来の制御に関与していると考えられています2)。なお、子宮平滑筋ではPGE2受容体は少ないため子宮収縮作用は弱いですが、子宮上部筋には収縮に、下部筋に対しては抑制(子宮弛緩及び子宮頸管熟化)に働きます8)

子宮収縮の中心となるオキシトシンは、妊娠初期より母体血中のエストロゲンの影響で増加し、妊娠中期より胎動刺激や胎児下垂体からの分泌も加わりさらに増加します。また、プロスタグランジン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone:TRH)、Caイオン等によっても分泌が亢進し、分娩直前にはオキシトシン受容体が急激に形成され、その結果、子宮体上部で強く短い収縮が起こります8)。つまり、分娩はプロスタグランジン(PGE2やPGF等)分泌によって子宮頸管熟化と子宮収縮の機序を共有しながら進行していきます。

子宮頸管熟化作用と子宮収縮作用3、8)
子宮頸管熟化作用と子宮収縮作用

EP1、EP2、EP3、EP4:PGE2受容体サブタイプ
OT:オキシトシン
OTR:オキシトシン受容体

引用文献3、8)より作図

(3)分娩誘発の方法

分娩誘発は、自然に子宮頸管熟化や子宮収縮が開始しない場合に、分娩の3要素(産道、胎児、娩出力)のうち、産道と娩出力に働きかけて分娩を促す方法です。分娩誘発を行う際は、まず産道である子宮頸管の熟化を確認し、熟化が不十分な場合には子宮頸管熟化剤又は子宮頸管熟化処置により子宮頸管の熟化を促します。子宮頸管が熟化していることを確認したうえで、娩出力である子宮収縮の強度を確認し、収縮が不十分な場合に子宮収縮薬を使用します。

分娩誘発の方法
分娩誘発の方法

子宮頸管熟化剤又は子宮頸管熟化処置を行う場合には、過強陣痛を避けるため、原則として子宮収縮薬は併用しません。なお、プロウペスでは子宮収縮薬は併用禁忌です。

子宮頸管が十分に熟化していないうちに子宮収縮薬による分娩誘発を行った場合、分娩誘発が成功しにくいことが報告されています9)

子宮頸部の状態と子宮収縮薬による分娩誘発の失敗率(海外データ)9)
Cervical Score 初産婦 経産婦
0〜3点 45.8(27/59例) 7.7(2/26例)
4〜6点 10.3(30/292例) 3.9(10/257例)
7〜10点 1.4(3/208例) 0.9(2/215例)

子宮頸管熟化法としてプロスタグランジン製剤を使用せずに子宮収縮薬による分娩誘発を行った際の成績
分娩誘発失敗の定義: 適切な管理にもかかわらず、胎児機能不全、急性事象(胎盤剥離又は臍帯脱出)、胎児骨盤不均衡又は胎位異常以外で、経腟分娩ができなかった(帝王切開となった)場合
Cervical Score:子宮頸部の方向、硬度、長さ、開大度、児頭の位置の5項目について0~2点で評価

引用文献9)より作表

1)齋藤良治他:日産婦誌. 1997: 49(4); N83-N86.
2)杉村基:臨婦産. 2012: 66(2); 142-147.
3)杉村基:産と婦. 2019: 86(増刊); 298-304.
4)小川正樹:産婦の実際. 2015: 64(12); 1867-1872.
5)小川正樹他:日産婦誌. 2011: 63(12); N238-N243.
6)Goshowaki H, et al.: Prostaglandins. 1988: 36(1); 107-114.
7)Hayashi RH: J Reprod Med. 1993: 38(1 Suppl); 66-72.
8)大浦訓章他:周産期医. 2010: 40(9); 1339-1345.
9)Arulkumaran S. et al.: Aust N Z J Obstet Gynaecol. 1985: 25(3); 190-193.